咀嚼筋の痛みに伴う歯痛
食べものを噛む時に使う咀嚼筋は、咬筋(こうきん)、側頭筋(そくとうきん)、内側翼突筋(ないそくよくとつきん)、外側翼突筋(がいそくよくとつきん)の4つから構成されています。これらの筋肉が歯ぎしりや食いしばり、噛み合わせの異常などによって酷使されると痛みを生じることがあります。これを咀嚼筋痛と呼び、歯の痛みと勘違いしやすいです。
歯が痛い。そんな時には何らかの異常が疑われるため、必ず原因を突き止めて、適切な方法で対処する必要があります。
ここでは、歯が痛い時の応急処置の方法や歯が痛くなる原因と治療法について、詳しく解説します。
歯の痛みは、頭痛や腹痛とはまた違った苦痛をもたらします。そのため何よりも歯痛が最も苦手という方も多いことでしょう。今現在、歯が痛い症状に悩まされている場合は、次の方法で応急的に処置しましょう。
【方法1】お口の中を清潔に保つ
お口の中が不潔になると、細菌が繁殖して、歯の痛みも強まることがあります。歯の痛みの原因が何であれ、お口の中を清潔に維持することは、新たなトラブルを未然に防ぐことにもつながりますので、口腔ケアはしっかり行うようにしてください。ただし、患部を刺激しないよう配慮することは重要です。
【方法2】患部を冷やす
痛みの原因が炎症である場合は、患部を冷やすことで症状の改善が見込めます。保冷材や冷たい水で濡らしたタオルを顎や頬の上から当てると、患部を間接的に冷やすことができます。氷などを患部に直接当てると、歯や歯茎の血流が悪くなり、かえって症状が悪化する可能性もあるため避けるようにしてください。
【方法3】痛み止めを服用する
歯の痛みが強くて日常生活に支障をきたす場合は、痛み止めを服用しましょう。痛み止めは、風邪をひいた時などに飲み慣れている製品で問題ありません。ただし、痛み止めはあくまで対症療法であり、歯が痛い原因を根本から取り除けるものではないことから、長期間、服用し続けるのはNGです。必ず歯科を受診して、歯の痛みの原因を突き止めましょう。
歯が痛くなる原因は多岐に渡ります。歯科医院で診断を受けた上で、適切な治療法を受けることが大切です。
食片圧入とは、歯と歯の間に食べ物が詰まる現象を指します。もともと歯と歯の間にすき間があるすきっ歯の方や歯周病で歯茎が下がって歯間距離が広くなっている方に起こりやすいトラブルです。食べ物の詰まり方によっては、痛みや強い圧迫感を伴います。
ほとんどのケースは、爪楊枝やデンタルフロスを使うことで、詰まった食べカスを取り除けますが、患者さんの歯の状態によってはそれが難しい場合もありますので、無理はせずに歯科を受診しましょう。歯科医師が歯冠部の食べカスを適切な方法で除去します。食片圧入を繰り返すようであれば、修復治療や矯正治療など、歯と歯の間のすき間を埋める処置も検討する必要があります。
冷たい食べ物や飲み物を口にした時に歯が「キーン」としみる場合は、象牙質知覚過敏症が疑われます。エナメル質の摩耗や亀裂によって、歯の神経が分布している象牙質へと刺激が伝わりやすくなる症状で、一時的に鋭い歯の痛みが生じるのが特徴です。
細菌感染によって痛みが生じているわけではないので、むし歯ほど深刻ではありませんが、重症例では歯髄炎を引き起こし、抜髄が必要となる可能性もゼロではないため、その点はご注意ください。
象牙質知覚過敏症では、さまざまな方法で歯を守ることが大切です。具体的には、以下のような治療の選択肢が挙げられます。
象牙質知覚過敏症の治療法は、重症度に応じて大きく変わるため、まずは歯科で診察を受ける必要があります。
むし歯になると、エナメル質が溶かされて、象牙質がむき出しとなります。この段階での歯の痛みは、象牙質知覚過敏症に似ています。冷たい物や甘い物を口にした時だけ、歯の痛みが生じます。むし歯がさらに進行すると、歯の神経と血管から構成される歯髄(しずい)にまで感染が広がり、安静時にもジンジン・ズキズキといった歯の痛みが生じるようになります。これはむし歯特有の痛みで、副交感神経が優位になる就寝前などに強まりやすいです。
むし歯による歯の痛みは、むし歯治療を受けることで改善できます。エナメル質や象牙質にとどまっているむし歯なら、感染した歯質を削って詰め物・被せ物を装着します。歯髄炎を引き起こしているむし歯は、抜髄と根管治療が必要です。
歯の神経まで達したむし歯を放置していると、根管内で細菌が異常繁殖し、根っこの先から汚染物質が漏れ出して膿の塊を作るようになります。これを根尖性歯周炎といいます。根尖性歯周炎では、噛んだ時に強い痛みが生じるため、食事に支障をきたすことが多いです。膿の塊が大きくなると、歯茎が腫れて、そこから膿が漏れ出てくることもあります。
感染源となっている根管を無菌化する必要があります。いわゆる根管治療を行うことで、細菌を流している蛇口が閉まり、根尖部の病巣も徐々に消失していきます。根管治療を行っても改善が見込めないケースでは、外科的に病巣を切除する場合もあります。専門的には、外科的歯内療法(げかてきしないりょうほう)と呼ばれるもので、歯茎をメスで切り開いた上で、膿や汚染された組織、根尖部を取り除きます。
口腔内には何ら異常が見られないにも関わらず、噛んだ時になどに鋭くて強い歯の痛みが生じる場合は、歯根破折が疑われます。歯茎の中に埋まっている歯根が何らかの理由で割れたり、折れたりしている状態で、放置していると細菌に感染するリスクが高いため要注意です。安静時にまでズキズキと痛むようになったら、歯髄炎を併発しているかもしれません。
破折した歯根は、専用の薬剤で接着したり、患部のみ切除したりする方法で治療できることがあります。いずれも高度な治療法となることから、経験や知識の豊富な歯科を受診することが重要です。歯根の折れ方・割れ方によっては、抜歯が第一選択となることも珍しくありません。抜歯をした場合は、欠損部をブリッジ・入れ歯・インプラントなどの補綴装置で補います。
ここまでは、歯や歯茎に明らかな異常がある場合の痛みについて解説してきましたが、実はそうした歯の異常がないにも関わらず、歯の痛みが生じる場合もあります。厳密には非歯原性歯痛(ひしげんせいしつう)と呼ばれるもので、以下の4つが挙げられます。
食べものを噛む時に使う咀嚼筋は、咬筋(こうきん)、側頭筋(そくとうきん)、内側翼突筋(ないそくよくとつきん)、外側翼突筋(がいそくよくとつきん)の4つから構成されています。これらの筋肉が歯ぎしりや食いしばり、噛み合わせの異常などによって酷使されると痛みを生じることがあります。これを咀嚼筋痛と呼び、歯の痛みと勘違いしやすいです。
顔面や口腔内にまで枝が延びている三叉神経に異常が生じると、歯の痛みと誤解しやすい三叉神経痛が生じる場合があります。特に帯状疱疹(たいじょうほうしん)を発症した場合は、神経の分布に沿ってウイルスによる炎症が起こりやすく、歯髄炎に類似した症状が認められることもあります。その他、神経を抜いた歯や抜歯、外科手術を受けた後などに、同様の歯痛が生じることもあります。
片頭痛に伴う歯の痛みを神経血管性の歯痛といいます。ズキズキと脈打つような痛みは、歯髄炎のそれと似ていますが、あくまで一過性の症状であり、積極的な治療を必要としないケースも少なくありません。
うつ病のような精神疾患に伴う歯の痛みを心因性の歯痛といいます。歯や歯周組織、その周りに分布する神経や血管は正常であるにもかかわらず、歯の痛みが生じます。この歯痛は歯科治療では改善が見込めず、心療内科等での診断および治療が必要となります。
このように、歯が痛い場合は、さまざまな原因が考えられるため、まずは座間市の相武台ゆうデンタルクリニックまでご相談ください。歯の痛みの原因によっては自然治癒が見込めますが、そのほとんどは専門的な治療が必要となります。何もせずに放置していると、より強い痛みに悩まされるだけでなく、歯そのものを失ったり、全身の病気を誘発したりするリスクも生じます。そうなる前に歯の痛みは適切な方法で対処していきましょう。